(夕暮れ近い教室で)
次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。
夕暮れ近い教室で五、六人の小学生が放課後の掃除をしていた。机といすを全部片側の壁際に寄せてしまって、空いた床を掃
は
き、ぞうきんがけをしてゆくのがその学校の決まりだった。少年たちは先生が検分に来てもはっきり跡が残るようにろくに絞らないぬれぞうきんに両手をついて、しりを高々と上げ、教室を端から端へ走って行った。一度往復するとぞうきんは真っ黒に汚れ、バケツの中はすぐ墨汁ぼくじゅう色になった。いつもはいくらゆすいでもその水が澄んでいるようになるまでふけと命じられているのだが、このごろは一回床にぞうきんの跡をつければ終わりだった。進学組とそうでない組とに教室の中が分かれて以来、掃除のしかたまでがいつとなしにそんなふうにぞんざいになっていた。
は 「エチオピア、お前の妹できないんだってな。答えられないと立ったまま泣きだしちゃうんだってな。」
ホウキを手に時々掃くまねをしながらずるを決め込んでいる副級長の長浜が言った。長浜は門のある大きな家に住む役人の息子で、やせて小柄だが鼻筋の通ったきりっとした顔をしていて、いつもきちんと金ボタンの制服を着、黒い靴下に革靴を履いている少年だった。エチオピアとあだ名で呼び捨てにされた少年が自発的に進学組の課外勉強から降りて以来、彼は時折?A ?そんなふうに意地悪く少年を嘲笑ちょうしょうするようになっていた。聞こえないふりをして少年がぞうきんの上に四つんばいになって床を走って行くと、彼更に言った。
は 「しょうがんねえよなあ、どうせお前んちのやつはみんな高等科に行くんだものな。そうだろ。」
長浜がわざと口にした高等科という一言は少年にとってきつ過ぎた。父親に進学を拒まれて以来、いつものちゃめではしゃぎやす性質を失って?B ?としていた①少年の中で何かがかっと燃えだし、少年はぞうきんを持ったまま立ち上がった。
い 「長浜、もう一度言ってみろよ。え、もう一度言ってみろよ。」
②長浜は浅黒い端正な顔に狼狽ろうばいの色を浮かべ二,三歩後じさりした。(東京家政学院改)
問一A Bにあてはまることばを次から選び、それぞれ記号で答えなさい。
ア ぬけぬけイ うじうじウ うつうつエ ちくちくオ ぬくぬく
問二①「少年の中で何かがかっと燃えだし」とあるが、「燃えだし」たものは何か。次から選び、記号で答えなさい。
ア 長浜にこんなふうに嘲笑される原因となった、頭の悪い妹への怒り。
イ 進学したい気持ちをおさえて、父の命令に従った、自分のふがいなさへの怒り。
ウ 自分のことだけではなく、妹まで馬鹿にした長浜への怒り。
エ 進学したいのにさせてくれなかった、父親の理解がないことへの怒り。
問三②「長浜は浅黒い端正な顔に狼狽の色を浮かべ二,三歩後じさりした」とあるが、狼狽の色を浮かべたのはなぜか三十字以内でまとめて書きなさい。
問四長浜の人物像について説明されている一文を文章中から抜き出し、初めの五字を書きなさい。
解答
問一A エ B ウ
問二イ
問三自分の言葉でこれほど少年が怒るとは思ってもみなかったから。
問四長浜は門の
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