トットちゃんは、今日、生まれて初めて、戦争で怪我をした兵隊さんのたくさんいる病院に行った。
一緒に三十人くらいの小学生が行ったけど、みんな、いろいろの学校から集まってきた知らない子達だった。いつの頃からか、国の命令によるもののようだったけど、一つの小学校から、二人か三人、トモエのように人数の少ない学校は一人とか、そんな風に、お見舞いに行く子が決まると、三十人くらいのグループにまとめて、どこかの学校の先生が引率して、兵隊さんの入っている病院に行く、というようなことが、少しずつ始まっていた。
そして、今日は、トモエからは、トットちゃんだった。
引率の先生は、めがねをかけて、やせた、どこからの学校の女の先生だった。
その先生に連れられて、病院の部屋に入ると、白い寝巻きを着た兵隊さんが、十五人くらい、ベッドの中にいたり、起き上がったりして、むかえてくれた。
怪我してるって、度運なのかと、トットちゃんは心配してたけど、みんながニコニコしたり、手を振ったり、元気なので安心した。
でも、頭に包帯してる兵隊さんもいた。
女の先生は、部屋の、だいたい、真ん中へんに子供を、まとめると、まず、兵隊さんに、「お見舞いに参りました」と、挨拶をした。
みんなも、おじぎをした。
先生は続けて、「今日は、五月五日で、端午のお節句ですので、『鯉のぼりの歌』を歌いましょう」といって、早速、手を指揮者のように、高く上げ、子供たちに、「さあ、いいですか?三!四!」
というと、元気に、手を振り下ろした。
顔見知りじゃない子供たちも、みんな、大きな声で、一斉に歌い始めた。
いらかの波と 曇の波…… ところが、トットちゃんは、この歌を知らなかった。
トモエでは、こういう歌を、教えていなかったから。
トットちゃんは、そのとき、優しそうで、ベッドの上に正座してる兵隊さんのベッドのはじに、人なつっこく腰をかけて、「困ったな」と思いながら、みんなの歌を聞いていた。
いらかの波と…… が終わると、女の先生は、いった。はっきりと。
「では、今度は、『ひな祭り』です」トットちゃん以外の、みんなは、きれいに歌った。
あかりをつけましょ ぼんぼりに…… トットちゃんは、黙っているしかなかった。
みんなが歌い終わると、兵隊さんが拍手をした。
女の先生は、にっこりすると、「では」といってから、「皆さん、『お馬の親子』ですよ。元気よく、さあ、三!四!」
と、指揮を始めた。
これも、トットちゃんの知らない歌だった。
みんなが、「お馬の親子」を歌い終わったときだった。
トットちゃんの腰掛けてるベッドの兵隊さんが、トットちゃんの頭をなでて、いった。
「君は、歌わないんだね」トットちゃんは、とても申し訳ない、と思った。
お見舞いに来たのに、一つも歌わないなんて。
だから、トットちゃんは、ベッドから離れて立つと、勇気を出して、いった。
「じゃ、あたしの知ってるの、歌います」
女の先生は、命令と違うことは始まったので、「何です?」
と聞いたけど、トットちゃんが、もう息を吸い込んで歌おうとしてるので、黙って聞くことにしたらしかった。
トットちゃんは、トモエの代表として、一番、トモエで有名な歌がいい、と思った。
だから、息を吸うと、大きい声で歌い始めた。
よーく 噛めよ たべものを…… 周りの子供たちから、笑い声が起こった。
中には、「何の歌?何の歌?」と、隣の子に聞いてる子もいた。
女の先生は、指揮のやりようがなくて、手を空中にあげたままだった。
トットちゃんは、恥ずかしかったけど、一生懸命に歌った。
噛めよ 噛めよ 噛めよ 噛めよ たべものを……
小豆豆今天到医院去了,那里住着许多在战争中负伤的士兵。小豆豆有生以来还是第一次到这种医院去。一起去的大约有三十名小学生,大家都来自各个学校,相互之间都不认识。不知什么时候国家好象颁发了一道命令,根据这道命令,逐渐开始了这么一项活动,就是到医院去慰问伤兵。每所小学出两、三名学生,象巴学园这类人少的学校就出一名,然后把他们按三十人编成一组,由某个学校的一位老师带领,到住有伤兵的医院去。而巴学园今天轮到的正好是小豆豆。今天负责带队的是其他学校的一位女老师,她戴着一副眼镜,长的很瘦。孩子们在老师的带领下走进了病房,欢迎他们的士兵都穿着白色的睡衣,有的躺在床上,有的坐起了上半身,总共有十五名左右。小豆豆一直担心受伤会是什么样子,可是看到大家都面带笑容挥手,一个个精神还不错,也就放心了。不过,也有的士兵头上缠着绷带。女老师把孩子们集中到差不多是房间的正中央,首先向士兵们躬身致意:
“我们向各位慰问来了!”
大家也向士兵们行了鞠躬礼。老师又继续说道:
“今天是五月初五,是端午节,所以我们唱一支《升鲤鱼旗之歌》吧!”
说着立即象指挥似的高高抬起双手,对孩子们说:
“好,准备好了吗?预备——唱!”
与此同时,她的双臂就上下挥动起来了。本来素不相识的孩子们也都一齐方声唱了起来。
“瓦房象海洋,白云似波浪……”
然而,小豆豆却不会唱这支歌,因为巴学园从来没有教过,这时刚好有一个看上去很温和的伤兵正端坐在她身边的床上,于是小豆豆便很亲近的挨着这张床沿坐了下来。心里想:“这可太丢人啦!”耳朵却仍在听大家唱歌。
“瓦房象海洋”唱完了,女老师又马上口齿清晰地说道:
“好,下面唱《女孩节之歌》。”
除了小豆豆之外,大家都唱的很带劲儿:
“快快点上花灯吧,六角花灯……”
小豆豆只好坐在一旁默默听着。
大家的歌声一停,士兵们立即报以热烈的掌声。女老师微微笑了一下,说了声“再唱一支”,然后又冲着同学们说:
“同学们,下面是《母马和它的孩子》啦!大家要拿出精神来!好,预备——唱!”
女老师说完就指挥大家唱起了这支歌。
这首歌小豆豆也不会唱。等到大家把《母马和它的孩子》唱完时,小豆豆坐的这张床上的士兵抚摩着小豆豆的头说:
“你没有唱啊!”
小豆豆心里觉得实在过意不去,既然是来慰问的,却连一支歌也没有唱!于是小豆豆从床边站起来,鼓足勇气说:
“那好,唱一个我会的歌。”
女老师以为发生了违反纪律的事,就问道:
“你说什么?”
但看来她已经看到小豆豆运足了气正准备唱歌,所以就不再吭声,准备听下去了。
小豆豆心想:“作为巴学园的代表,最好还是唱巴学园最有名的歌。”
于是,小豆豆吸了一口气便唱起来了:
“嚼,嚼,嚼哟!吃的东西要细细地嚼哟!……”
周围的孩子们发出了笑声。其中有的还向身边的小朋友问道:
“什么歌?她唱的是什么歌呀?”
女老师指挥不成,举起来的手在半空中停住了。小豆豆虽然有些不好意思,但还是十分卖力地唱着:
“嚼,嚼,嚼哟!吃的东西要细细地嚼……”
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