(遠くから見ると診療所は)
次の文章は、父親から診療所の手伝いを言いつけられた小学生の正が、友人の啓之といっしょに出かけていき、薪
まき運びを手伝う場である。この文章を読んで、後の問いに答えなさい。
面 遠くから見ると診療所は、町の映画館でみた「ドラキュラ」の西洋館のようだった。朽ちた原木の門から玄関までは両わきに桜がおおって、①二人は青い光の中を進んでいった。道はわだちを残して、芝生がまだ柔らかくズックに余るほどだった。互いの顔が照り返しに輝い、まだら蛇に似たくねった動きをして歯を出して笑うと歯までが染まった。
て「いいね。」
「 ②笑いの中から弾みが生まれて、二人はその気持ちで踏み入った。かつての結核療養所だけあって庭は広かった。おおばこやすげなどの雑草がところかまわず乱れていた。そこから木々の間に見る村は、かすみの中に、いつまでもゆったりと沈み込んでいるかとわれた。
うん、いいとこだえ。」
思 しばらくすると、女先生が医者特有のにおいをさせて来て、男ようにかすれた口調で言った。
の「御苦労さん、薪を運んでらうからね。しっかりやってよ。」
もはいっ......。」
「 二人はきっぱりと返事をしたが、③何かさせられた気がしてこそばゆかった。女先生は、正と啓之の坊主頭を大きなあったかい手でさすってから、裏手のくぬぎ林の見える所まで登ていった。
っあの小屋からね、しょいこもあるから頼むよ。」
「 そう言って、もう一度念を押すように肩をたたいた。
一冬を越した薪は、かなり乾いていて無理をすれば一度に二束は運べた。競争したり、ときどき休んで話したりしながら昼前には終わった。
「 正たちは、右肩をぐるぐるまわして山すその道を下りながら瞳を輝かした。少し風が出てくると、汗ばんだ肌にはここちよかった。
肩がぎしぎしなるやあ......。」
「何かくれるだろうな。」
かたわらの茎の長い草を抜いて、正のしりをたたきながら啓之は言った。
「チャンバラやっか??????。」
疲れよリも④仕事を終えた爽快感が二人の体を軽くしていた。後先になってはしゃいで下ると、テラスの椅子で女先生があふれるような笑みを見せていた。
「さあ、コーヒーでも飲んで。」
二人は鼻を抜けるはじめての香ばしさに引き寄せられていた。
(宮城県)
問一①「青い光の中」を歩いていった二人の少年のようすを表した文として適当なものを次から選び、記号で答えなさい。
ア 二人は芝生の上を、桜若葉に吹く風を全身に受けながら歩いていった。
イ 二人は青空のもとを、桜の花の香りに全身を包まれながら歩いていった。
ウ 二人は芝生の上を、桜若葉の照り返しで全身を染めながら歩いていった。
エ 二人は青空のもとを、桜の花びらを全身に受けながら歩いていった。
問二②「笑いの中から弾みが生まれて、二人はその気持ちで踏み入った」から読みとれる二人の少年の気持ちの変化を、次のような文で表したい。?A?、 B に入る適当なことばを、それぞれあとから一つずつ選び、記号で答えなさい。
はじめ診療所を見たとき、少年たちは?A?を感じたが、二人の笑いがきっかけとなって、?B?になって庭の中に入っていった。
A ア 気おくれイ 後ろめたさウ あせりエ 気まずさ
B ア 豊かな気持ちイ 軽やかな気持ちウ のどかな気持ちエ おだやかな気持ち
問三③「何かさせられた気がしてこそばゆかった」とあるが、このときの二人の少年の気持ちを述べたものとして適当なものを次から選び、記号で答えなさい。
ア女先生を驚かせるような元気な返事をしたことを恥ずかしく思った。
イ さそいこまれるままに軽々しい返事をしたことをきまり悪く思った。
ウ 女先生を感心させようとはっきり返事をしたことを誇らしく思った。
エ 思わずすなおな返事をしたことをなんとなくてれくさく思った。
問四④「仕事を終えた爽快感」とあるが、文章中に描かれている二人の少年の様子のなかで、この気持ちが最もよく表れている部分を一文で抜き出し、初めと終わりの三字を書きなさい。(句読点は含まない)
問五次の文の を補って、二人の少年に対する女先生の心情が表れている文になるようにしたい。?A?、?B?に入る適当なことばをそれぞれ五字以内で書きなさい。
仕事の前には二人の少年を?A?、仕事からもどってきたときには?B?迎えている。
解答
問一ウ
問二A ア B イ
問三エ
問四正たち?かした
問五A はげましBあたたかく
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